吉見のいちご畑 横田農園 は、現在準備中です。
2015/10/09 04:14
先日、飼料米の補助金が品代に比べて高い、というお話をしましたが、少し補足説明をさせていただきます。
補助金をそんなにもらえるのなら、飼料米を作る農家ってお得だな~と思いますが、実情は、こんな感じです。
以下、飼料米を作った場合の10アール当たりの利益(品代ー必要経費+補助金)です。
<品代>JAへ出荷した場合:10000円
<必要経費>(出荷調整をJAに依頼した場合。自分で行う場合はもっと増えます)
◎JAへ払う出荷調整用の費用(カントリーエレベータ利用料):25000円
◎種子・肥料・農薬・燃料代・水路の維持管理費・電気代・借地代等:約40000円
◎農機具のローンと整備費:約60000円
<補助金>
飼料米を作ると国の助成金は最大100000円です。
整理すると、
売上+補助金で110000円
必要経費は125000円
差額15000円の赤字です。これは農家が負担することになります。
大きな補助金をもらっても飼料米だけでは、農家も赤字なのです。
それなら飼料米でなくて主食用の米を作ったらいいのに、と思いますよね。では主食用の米を作った場合の利益はどのくらいでしょうか。
27年産米のJA買取価格は次の通りで、昨年より500円高いのですが・・・
◎コシヒカリ玄米 30Kg 5000円
◎彩のかがやき 30Kg 4000円
埼玉県の平均生産原価は30Kg 7500円、つまり主食用の米を作ってもJAに出荷すると赤字になります。
JAに出荷せずに自分で販売すると、儲けが150000円くらいになるので、ここで初めて25000円の労働力の対価が出てきます。しかし農家が全てを自分で販売することはかなり難しいので、苦しんでいる訳です。
このような現状でも、なぜ農家が米を作るかと言うと、受け継いだ農地を所有していると荒地にできないからです。
耕作放棄地があると害獣の繁殖地になってしまったり産廃の不法投棄が起こってしまいます。
そうすると、お役所から改善命令が出てしまいます。それ依然に地域からクレームが出てしまいます。
農地の維持管理には、草刈りや耕うんを業者に依頼する必要があり、年間30000円程度の経費が掛かります。
15000円の赤字のほうが安いのです。また頑張って米を自分で販売すれば多少の黒字は出ます。
ここが、定年退職した地主が米を作る理由です。
それでも苦しいので、条件不利地から耕作放棄地は年々拡大しています。
農地を売ると言う手もありますが、市街地の農地なら売れますが、殆どが売れない農地です。
これが、当地域の農地と農業の現実です。
米どころ(東北地方)ではブランド力もあり、JAの引取り価格や販売価格が高いので当地域と違い大規模に作ることで米で農家の生計が成り立っていると思います。
しかし、もし今回のTPPの影響で米産地の価格が下がると米の産地には計り知れない影響があると思います。
当地域同様、耕作放棄地が増えていくでしょう。そうすると害獣が急激に増えます。
当園周辺でも耕作放棄地や廃墟の影響でタヌキ・アライグマ・ハクビシンが増えています。トウモロコシなんて全て食べられてしまいます。
農業ができなくなりますね。更に人家まで侵入してくるので、マダニやノミと言った被害も出てきます。人も住み難くなります。
当地域では出ませんがイノシシ・サル・熊・鹿等も急激に増えますね。先日アルソックが国の補助金を受けて狩猟の仕事を始めたという記事をみました。
これが、農地の難しい所です。
人は自然から飲み水や食料の供給を受けていますが、農地が荒れていくとこれが不安定になる危険がある訳です。
このような現実を、もっと農家は皆様にお伝えしていく必要があると思っています。